
お子様の歯並びや噛み合わせは、遺伝だけでなく「口腔機能」の発達とも深く関わっています。食べる・飲む・話す・呼吸するといった毎日の動作が正しく行われないと、歯並びが乱れる原因になることもあるため注意が必要です。
最近では「口腔機能発達不全症(こうくうきのうはったつふぜんしょう)」という言葉が注目され、家庭でのトレーニングが歯並び改善に役立つと考えられています。ここでは、ご家庭でできる具体的なトレーニング方法と注意点について解説します。
目次
■子どもの口腔機能を育てるトレーニング
◎あいうべ体操
「あ・い・う・べ」と大きく発声しながら口を動かすこの体操は、お口周りの筋肉(口輪筋・頬筋・舌筋群)をバランスよく刺激します。
特に「べー」と舌をしっかり前に出す動作は、舌根沈下(舌が喉の奥へと沈み込む現象)を防ぎ、気道を広げる効果が期待できます。
鼻呼吸の促進によって口呼吸を改善することは、口腔機能発達不全症の予防や歯並び改善も期待できます。慢性的な口呼吸は、上顎の成長不足や出っ歯傾向の原因にもなるため、毎日の習慣として取り入れることが望ましいでしょう。
◎舌トレーニング
舌の筋力低下や低位舌は、歯列不正や発音障害の原因となることがあります。舌先を上顎前歯のすぐ後ろにある「スポット(切歯乳頭付近)」に置く練習は、安静時に舌が正しい位置に収まる習慣を作るために重要です。
この位置に舌があると、上顎の正しい成長が促され、歯がきれいに並ぶスペースを確保しやすくなります。さらに、舌筋群(特に舌骨上筋群)を鍛えることで嚥下機能が改善し、誤った飲み込み方(舌突出癖)による歯ぐきや前歯への負担を減らすことにつながります。
◎ガーグルストップ
うがいをしながら声を出す「ガーグルストップ」は、喉の周りの筋肉(咽頭収縮筋や軟口蓋挙筋)を刺激するトレーニングです。
これにより嚥下機能が向上し、食べ物や飲み物が正しく食道に流れるようサポートします。口呼吸の予防にもつながるため、むし歯や歯周病のリスク低下にも有効です。
特に口腔乾燥はむし歯のリスク因子となるため、ガーグルストップで唾液分泌を促すことは歯並び改善と全身の健康維持の両面に役立ちます。
◎ガムトレーニング
無糖のガムを左右均等に噛むことは、咀嚼筋の発達を助け、顎関節や咬合の安定につながります。しっかり噛む習慣は顎骨の成長を促し、歯列のアーチの幅を適切に確保しやすくするため、歯並び改善の補助的役割を果たします。
さらに、咀嚼は脳への血流を増やし、学習や集中力の維持にも良い影響を及ぼすことが知られています。ただし、嚥下機能が未熟なお子様では誤飲の危険があるため、保護者の方のサポートが必要です。
◎風船遊び
風船を膨らませる行為は、口唇を閉じる力(口唇閉鎖力)や頬の筋肉の筋力強化に加え、息を吐く時に使う筋肉(横隔膜・肋間筋)のトレーニングにもなります。強く息を吐くことで呼吸様式が整い、自然な鼻呼吸への切り替えをサポートします。
また、息をしっかり吐く動作は正しい発音や嚥下の練習にも直結します。遊び感覚でできるため、口腔機能トレーニングを継続する動機づけにもなりやすいのが大きな利点です。
■子どものお口のトレーニングの注意点
◎無理をさせないこと
子どもの成長スピードや筋力の発達には個人差があります。過度なトレーニングは、口輪筋や舌筋群に不自然な負荷をかけ、顎関節や歯ぐきに痛みや違和感を生じさせることがあります。
特に成長期は顎骨や歯列が形成されている途中のため、過剰な力は歯並び改善どころか逆効果となる場合もあります。楽しみながら自然に続けられる範囲で行い、「嫌がっているのに続けさせない」ことが大切です。
◎正しい方法で行うこと
トレーニングは姿勢や舌の位置が誤っていると十分な効果を発揮しません。例えば舌のトレーニングでは、舌先を上の前歯(上顎切歯)の後方にある「スポット」に軽く当てることが基本ですが、強く押し付けすぎると歯や歯ぐきに負担がかかってしまうことも。
誤った嚥下癖(舌突出癖)がある場合には、専門的な評価と指導が必要です。歯科医師や歯科衛生士のアドバイスを受けて正しいフォームを理解したうえで、家庭で取り組むのが安心です。
◎習慣化を意識すること
ご紹介したトレーニングを一時的に行っても筋力強化や機能改善は得られません。筋肉は反復刺激によってのみ発達し、習慣化して初めて安定した効果が期待できます。
歯みがきの後や就寝前など日課に組み込むと継続しやすく、無理なく生活の一部にできます。また、保護者の方が一緒に行うことで「親子の共同作業」となり、モチベーションを高める効果もあります。
■まとめ
子どもの歯並び改善には、ワイヤー矯正などの専門治療だけでなく、日常生活での「お口の機能トレーニング」が大きな役割を果たします。
あいうべ体操や舌トレーニング、風船遊びなどは、遊び感覚で続けられるため効果的です。ただし、無理なく正しい方法で習慣化することが重要です。
江南市小郷町のグリーンデンタル夫馬では、患者様一人ひとりの成長段階に合わせたアドバイスを行い、むし歯や歯並びのお悩みにも丁寧に対応しています。気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。

