
お子様が普段から口を開けて呼吸している姿を見て「大丈夫かな?」と心配になる親御さんも多いのではないでしょうか。
口呼吸は一見すると些細な癖のように思え、成長とともに治ると思われがちですが、放置するとむし歯や歯並びの乱れ、さらには全身の健康にまで影響を及ぼすことがあります。
本記事では、子どもの口呼吸を治した方がよい理由と、具体的な治し方について解説します。お子様の健やかな成長のために、ぜひ参考になさってください。
目次
■なぜ子どもの口呼吸は治した方がいいのか?
◎むし歯や歯ぐきの病気になりやすい
口呼吸をしていると常にお口の中が乾燥しやすくなります。唾液には食べかすを洗い流したり、むし歯の原因となる「酸」を中和したりする作用がありますが、乾燥状態ではその働きが低下してしまいす。
その結果、むし歯や歯ぐきの炎症が進みやすく、歯みがきを頑張ってもトラブルが起こりやすくなってしまうのです。
◎歯並びの乱れを引き起こす
口呼吸が習慣化すると、舌の位置が下がり、上顎の成長が妨げられることがあります。そのため歯列が狭くなり、歯並びの乱れや出っ歯などの歯並びの乱れにつながることがあります。
将来的にワイヤー矯正など大がかりな治療が必要になる可能性もあるため、早めに改善しておくことで複雑な治療を回避することにもつながります。
◎口腔機能発達不全症のリスク
口呼吸は「口腔機能発達不全症(こうくうきのうはったつふぜんしょう)」と呼ばれる状態の一因になります。
これは噛む・飲み込む・発音するといったお口の基本的な機能が正常に発達しないことを指します。言葉の発達の遅れや、食べ物をうまく飲み込めないなど、日常生活に支障をきたす場合もあるため注意が必要です。
◎姿勢や顔つきへの影響
お子様が口呼吸を続けると、無意識のうちに前かがみの姿勢になったり、首や肩に負担がかかったりすることがあります。
また、舌や唇の筋肉の使い方が偏ることで、顔のバランスにも影響が出てしまうケースもあります。いわゆる「アデノイド顔貌」と呼ばれる特徴的な顔つきになることもあり、見た目の面でもデメリットがあります。
◎風邪や感染症にかかりやすい
本来、鼻呼吸には空気を加湿・加温し、細菌やウイルスを取り除くフィルター機能があります。しかし口呼吸ではこれらの防御機能が働かず、喉に直接冷たい空気や病原体が入ってしまいます。
そのため風邪をひきやすくなり、アレルギーや気管支炎といった呼吸器系のトラブルのリスクも高まります。
◎睡眠の質への影響
子どもの口呼吸は睡眠中のいびきの原因になり、さらに悪化すると睡眠時無呼吸症のリスクを高めることがあります。睡眠時無呼吸症は大人がなるというイメージがあるかもしれませんが、実はお子様にも関係しています。
睡眠の質が低下すると日中の集中力や成長にも影響するケースもあるため、早めの対処が大切です。
■子どもの口呼吸の治し方は?
◎姿勢や生活習慣の見直し
まずは普段の生活習慣を整えることが大切です。食事の際にしっかり噛む習慣をつけたり、寝るときの姿勢を整えたりすることで、自然と鼻呼吸へと誘導しやすくなります。また、鼻づまりなど耳鼻科的な原因がある場合には、医師の診察を受けることも重要です。
◎口腔筋機能療法(MFT)
口の周りや舌の筋肉を鍛える「口腔筋機能療法(MFT)」も有効です。舌を正しい位置に置く訓練や、口唇を閉じるトレーニングを繰り返すことで、鼻呼吸が習慣化しやすくなります。当院でも、お子様の年齢や成長段階に合わせた指導を行っています。
◎マウステープや補助具の使用
就寝中に口が開いてしまう場合は、専用のマウステープや口唇をサポートする補助具を使うことで鼻呼吸を促せます。ただし、これは一時的な補助に過ぎず、根本的な治療にはつながらないため、専門的な治療と併用することが大切です。
◎ORT矯正による根本改善
口呼吸などの癖を根本的に治すには「ORT矯正(口腔機能改善型矯正)」を行うことで改善が期待できます。
これはワイヤー矯正のように歯を直接動かすのではなく、口呼吸の原因となっている舌の位置や口腔周囲筋のバランスを整える治療です。
お子様が成長する時期に行うことで、歯並びだけでなく、正しい鼻呼吸や嚥下、発音といった機能も自然に獲得できるのが大きなメリットです。
装置は取り外し可能で負担も少なく、矯正を始める前段階の治療としてもメリットが多くあります。ORT矯正について詳しく知りたい方は過去のコラム「歯並びが悪くなる前に!お子様の悪い歯並びの予防法」をご覧ください。
◎歯科医院での継続的なサポート
口呼吸は一度で改善できるものではなく、継続的なトレーニングや見守りが必要です。歯科医院では定期的に経過を確認しながら、歯並びやお口の状態に応じて指導や治療を行います。患者様一人ひとりに合わせたアプローチを行うことで、長期的な改善を目指します。
■まとめ
子どもの口呼吸を放置すると、むし歯や歯並びの乱れ、口腔機能発達不全症、姿勢や顔つきの変化、さらには風邪、睡眠の質まで影響が広がることがあります。
当院ではORT矯正を中心に、生活習慣の見直しやMFTを組み合わせて総合的にサポートしています。お子様の口呼吸で気になる点がある方は、ぜひ一度ご相談ください。

