加齢に伴い「噛みづらい」「むせやすい」といった症状が目立つようになった場合は、口腔機能低下症(こうくうきのうていかしょう)が疑われます。あまり耳にしたことがない難しい名前ですが、高齢になると誰がかかってもおかしくない病気なので、気になる症状がある人は十分な注意が必要です。今回はそんな「口腔機能低下症」の症状や原因、改善方法などを江南市小郷町のグリーンデンタル夫馬がわかりやすく解説をします。
■そもそも口腔機能低下症とは?
口腔機能低下症とは、文字通りお口の機能が低下する病気です。加齢による筋力などの衰えが原因となることもあれば、全身の病気が背景に潜んでいることもあるため、該当する症状が認められる場合は一度、歯科医院での診察をおすすめします。
◎口腔機能低下症で見られる症状
口腔機能低下症では、次に挙げるような症状が見られます。
・硬い食べ物が噛みにくい
・食べこぼしが多くなった
・食べ物が口の中に残りやすい
・食事の時にむせることが多い
・口の中が乾きやすい
・滑舌が悪くなってきた
・薬を飲み込みにくいと感じることが多い
こうした症状は、日常生活に決定的な悪影響をもたらすものではありませんが、不自由やストレス、不快感が生じる場面は多くなります。何もせずに放置していると、咀嚼や嚥下、発音に深刻な問題が生じることもありますので、軽視するのは良くありません。
◎口腔機能低下症の検査・診断方法
口腔機能低下症が疑われる患者さんに対しては、次の7点を検査して診断を下します。
[口腔衛生状態不良(口腔不潔)]
舌の表面に付着する舌苔(ぜったい)の付着量を見て、口腔衛生状態を調べます。舌苔の量は、視診で確認できます。
[口腔乾燥]
唾液量や粘膜湿潤度を調べて、口腔内が乾燥していないかを調べます。
[咬合力の低下]
噛む力である咬合力を調べて、口腔周囲筋などの働きを検査します。
[舌口唇運動機能の低下]
舌と唇がスムーズに動くかどうかをオーラルディアドコキネシスという方法で調べます。具体的には「パ」「タ」「カ」という言葉を一定のルールに従って発音することで、滑舌の良し悪しを評価できます。
[低舌圧]
舌圧測定器を使って、最大舌圧を測ります。舌は筋肉で構成されている器官なので、加齢や病気によってその働きが衰えていきます。低舌圧になると、咀嚼や嚥下、発音などに支障をきたすようになります。
[咀嚼機能低下]
食べ物を噛む力を検査します。一般的には患者様にグミを噛んでもらって、どれくらい粉砕されたかやグルコースが溶出した量などを調べます。
[嚥下機能低下]
飲み込む機能である嚥下は、質問紙に回答していただく形で調べます。
■口腔機能低下症と診断されたら?
歯科医院などの医療機関で口腔機能低下症と診断された場合は、原因に応じた治療あるいはトレーニングが必要となります。
[あいうべ体操]
口腔機能低下症を改善する方法として最も簡便なのは、「あいうべ体操」です。口を大きく開けながら「あー」「いー」「うー」「べー」と動かすことで、口腔周囲筋が鍛えられます。口を動かす際に声を出す必要はないため、自宅ではもちろん、出先でも周囲を気にせず手軽に行えます。1回で10セット、それを1日3回行うのが目安です。
[補綴治療]
歯を失ったことで咬合力が低下し、口腔周囲筋の働きも衰えている場合は、補綴治療(ほてつちりょう)が必要です。補綴とは、失った歯を補うことで、ブリッジや入れ歯、インプラントなどが該当します。失った歯を放置していると、口腔機能が低下することに加えて、全体の歯並びが悪化し、顎の骨も痩せていくため、できるだけ早期に治療を受けた方が良いといえます。
[口唇・舌・頬の力を鍛える]
口唇や舌、頬の力は、専用の器具を使うことで鍛えられます。関心のある方は診療の際に相談してみるのも良いでしょう。
[その他]
舌苔の量が多い場合は、セルフケアで舌ブラシを活用して、舌磨きをしましょう。口腔乾燥は、唾液腺マッサージや水分の頻回摂取、お口の保湿剤などで改善できます。食事の時には1口20~30回噛むことを意識して、唾液の分泌を促すとともに、噛む力を鍛えることを心がけてください。
■まとめ
今回は、噛む・飲み込む・喋る力が衰える口腔機能低下症について、江南市小郷町のグリーンデンタル夫馬が解説しました。口腔機能低下症は年齢が高くなるとともに、誰もが発症する可能性のある病気なので、少しでも気になる症状が現れたら当院までご相談ください。もちろん、口腔機能低下症はむし歯や歯周病といった、日に日に組織が破壊されていく病気とは異なりますが、放置していると食事や会話、呼吸といった日常における最も重要な行為にまで深刻な悪影響が及びかねません。その点も理解した上で、口腔機能低下症と向き合うことが大切です。